第1回松前町社会福祉大会報告

 松前町の町民を中心に約400名が集まりました。動員をかけたわけではなく、個人申し込みです。盛況で、これから松前町も住民を中心にした町作りをするぞという声があがっていました。

記念講演 演題「住民主体の福祉の町づくり」

講師 鷹巣町社会福祉協議会会長 岩川徹 氏

 愛大法文学部社会保障法の鈴木静さんがまとめてくださいましたので、許可を得て、転載します。


福祉大会の第一部、岩川徹氏「住民主体の福祉の町づくり」講演の骨子

岩川さんのお話のながれを、3つに分けて書いてみました。

  1. 地方自治の考え方とこれからの地方自治について

     そもそも憲法や地方自治法で「地方自治の本旨」が保障されているけれど、昨年からの機関委任事務の廃止に伴って、これからはますます地方自治が重要になるだろう。
     地方自治体が、住民の望むことに答えられる(答えなければいけない)時代になってきているし、その第一歩は介護保険法だった(同事業計画策定への被保険者の参加)。
     また、小泉内閣の高支持率を例に挙げ、もともと日本人は政治意識があるが、住民の参加・参画制度が不十分なため、今まで政治意識が顕在化しなかっただけなのではないかと分析し、参加制度を整えれば、住民が主人公になる地方自治が可能だと言われた。

  2. 鷹巣町のワーキンググループの取組みとその成果

     町長当選後、デンマークに視察に行き、鷹巣でできることは「デンマーク式の住民の合意形成のプロセスを大切にすること」との確信から、ワーキンググループを発足させた。ワーキンググループの基本的な取り決め、運営方法、その成果などが報告された。
     その成果の一部である訪問看護ステーション、24時間介護体制、ホームヘルパーの充実、ケアタウン設置、介護保険事業計画などを、スライドをふんだんに使って紹介された。
     岩川さんがワーキンググループの取組みを通じて言いたかったのは次の2つだと思う。
     生活者の問題は生活者が一番よくわかる、だからこそ住民の意見を町に反映させるしくみを作ること。
     もう一つは、その住民の意見を反映したような高齢者福祉をつくるためには、行政は「人手(専門的スタッフ)の充実」「福祉機器の充足」「住宅改善」にいかに取り組むか「だけ」であり、それは自治体の覚悟次第だということ。
     これらは、講演のはじめに言っていた「鷹巣町でやっていることは、その気さえあればどこの自治体でもできる」につながるのだろう。

  3. これからの課題
     最後に、自治体が直面する課題を2つあげられた。
     1つ目は、町村合併構想について。何のために町村合併をしようとしているのか、住民にとってどのような利点があるのかが問われ、明らかにされなければいけない。現時点では、目的が不明確な町村合併には反対である。
     2つ目は、福祉サービスの受益と負担について。
     これから住民は良質のサービスを求めるだろうし、同時に市場原理が働く状況になる。その際、誰(どこ)が総合調整役をするのかが重要であり、それは住民に最も近いところがなるべきだ。
     鷹巣町の場合ならば町であり、松前町の場合は社協か?
    以上


 生活者である住民が自分たちの町をどうしていくのかを自主的に討論して、事業を進めていくわけです。聞いてても気持ちの良いものでした。その帰結として、在宅高齢者サービスをになうのが、鷹巣町社会福祉協議会。人口22000人なのにスタッフが120人、応募倍率は10倍ほどで、全国から応募があるとか。24時間ヘルパー派遣を日本で最も早く実現し、しかも待遇は公務員に準じています。
 一方、老健を核とした在宅複合型施設「ケアタウンたかのす」もケアスタッフが120名、何と職員対入居者の比率を1:1.3にしている。通常の老健が1:4、特養が1:6だからその手厚さがわかるだろう。全室個室で8人を一単位(一軒家)としたユニット制で、それぞれの部屋からは自由に出て行けるようになっていて、鍵が無い。鍵を閉めて、エレベーターは暗証番号、回廊式の廊下でいくら回っても出られないという施設とは大違い。「安全」という言葉で安上がりな介護と実際には怪我の連続という施設をよく見かけるが本当に大違いだ。

パネルディスカッション
テーマ「住民参加による福祉の町づくり」

コメンテーター:鷹巣町社会福祉協議会会長 岩川徹
パネリスト   :松前町社会福祉協議会会長 白石勝也
「やすらぎの館」館長 高石勝
高石フジエ
西古泉区長 山口久夫
いきいきサービス「ふれあい」代表 松本信興
ケアーネットワーク21代表 盛次義隆
司会      :愛媛朝日テレビキャスター 木藤隆雄

5/20福祉大会パネル打ち合わせ会(5/7)より

*各パネラーからの発表内容について(住民グループによる社会活動)

高石:退職後に何をするかと妻(見回り推進員)と相談した。それで、自宅前の田圃に住宅を立て、サロン(やすらぎの館)を作った。少し障害があるけれども元気な高齢者がかつての井戸端会議のように寄ってわいわいできればと考えた。やってきたお年寄りが自由に楽しんでストレスを解消できれば、障害などが進行しないだろうし、少しでも回復できれば良いと思った。一日おろうが、半日おろうが、弁当を持って来ようが何でも構わない。こういうボランティアの活動はいいことだと思っているし各地で増えれば良いと考えている。
 もともとボランティアだから助成などは考えていなかった。月・火・木・金の10時から17時まで開館。費用は300円、ホスト役は現在夫婦で何とかなっている。社協から月に2回作業療法士が来ているのでその時は参加者も多い。

山口:西古泉地域の区長になった。地域は何を問題として抱えているのか分からなかった。個別の話は聞くけれども全体として住民が何を考えているのか、特に新たな入村者については把握できなかった。数字的につかむためにアンケート調査を実施した。役員とアンケート調査員32人に協力してもらって、調査項目も含めて、手を加えてもらい、20項目のアンケートを実施した。内容としては@明るく住みよい地域作りについて住民はどう考えているのかA公民館活動への参加状況B高齢者の生きがい作りC子供・青少年の愛護と環境D西古泉道路計画に関してなど。地域に570戸あるうちの78%から回答を得た。結果を冊子にまとめた。すぐに解決できる問題、じっくり考えて解決できる問題、行政等と協力してやっていく問題に分け、取り組んだ。犬の糞の問題や違法駐車の問題などはすぐに解決していったし、駅までの照明が暗いとかカーブミラーの設置などは役場と相談して解決できる状況になった。「ひびけし」という地域紙を月2回発行し情報の共有を図ったり、民生委員、見守り推進員、ボランティアグループの3者が一緒になって高齢者への弁当作りや花見・月見行事、文化祭への出展などを行っている。お年寄りを退屈させないために花いっぱい運動、子供主体の地域運動会なども。やりがいがあった、まず自分たちで行動を起こしていくことが大切であると思う。

松本:無償ボランティアの時、利用者からお礼をと言われた時に困ったし、利用する側も困ることがある。ボランティアを継続していくために有償とした。実費のみ。その分責任が重くなり、開始時には契約している。平成11年7月から開始し、月111時間の実績が現在では355時間と3倍の伸びとなっている。もともと3名ではじめたボランティアが48名になった。ボランティア育成にも貢献してきた。定年後の人や主婦が中心だが、有資格者はいない。独居高齢者の増加を実感する、リピーターが多い。草引きや剪定が増えた。事業者には派遣しない。障害者・高齢者・子育て中の家庭が中心。家族がいる場合には派遣しないようにしていたが、最近は家族がいても実際介助が必要な場合は派遣している。自分ができるのに手を差し伸べるべきなのかどうかは議論になっている。どこまでボランティアなのかが問題点。

盛次:ケアネット21について。医療・保健・福祉従事者の連絡会。松前町の福祉の質を向上することを目標として月1回(19時から22時、30~50名)学習を積み重ねてきた。従事者間の連携は強く、松前町での在宅福祉の浸透が進んだ。
 しかし、ひとつの壁がある。安かろう、悪かろうのサービスも存在しても良いが、我々は鷹巣や北欧のような自分でもここで暮らしてみたいと思えるようなサービスを実施したい。しかし、介護保険や経営の壁が立ちはだかり、住民が期待するようなサービスを追求するのに難しい状況がある。やる気のあるスタッフがいること、松前町という立地条件の良さから言って、現行の制度の中でもさらに良質のサービスを提供していくことが可能なので住民の声をさらに反映したい。
 一般的に医療でも福祉でも何のために営業するかと言うとやはり利潤追求。つまり、本当にお年寄りのためにこのようにしたいということはできない。苦情処理システムも十分には機能していない。この状況では、例えば介護保険においてもサービスによっては利益率が低いものがあり、そういうサービスは必然的に排除されるという経営優先の弊害が出る。
 もうひとつに看てもらっている、看てあげているという上下構造がある。在宅でも同じで利用者・家族は遠慮している。つらい、怒られる、外へ出るなというお年寄りに対する圧迫は家族だけでなく、職員側にもある。人口の多くをしめるお年寄りの気持ちが反映されない構造を改革していきたい。
 利用者である住民にとってどのようなサービスが必要であるか、どういう状況になれば豊かな老後をおくることができるのかという観点で良質のサービス提供基盤を編み出したい。住民を含めて、介護保険で採算が合わない場合は他のものを利用するとか重層的に考えていきたい。そして利用者側の考え方や文化にも変革を求めたい。利用者側はどうだろうか?家族も本人もやはり自分勝手な人は多い。経営者も利用者も自己中心主義では松前町の高齢者対策の未来は無い。今後は自己中心主義から他の住民の幸福を味わう楽しみを享有することができるように変革したい。

白石:住民活動に対して社協が拠点となるように基盤を整えたい。要望のあった福祉バスも運行に向けて進んでいる。役場の事業となると書類その他でアクセスビリティが悪くなる。その点、自由な活動ができる社協を拡充したい。

 驚いたのは次から次へと出てくるフロアからの提言や質問でした。町民の良識や意欲は岩川さんがおっしゃるとおり、とても強いものであると感じました。岩川さんも会場の雰囲気にまるで地元にいるような錯覚に陥ったとか。また、招かれた大概の市町村では首長が自分の許可無く…と言う所もあるのにここは町長も議長も出てきているし、住民の熱意も高いのでとても期待ができるとのことでした。

 現在松前町の企画課では町民会議(ワーキンググループ)を作っていくために、福祉大会のビデオを見ています。皆さん、もうすぐですよ。