6月例会の報告(参加人数 15名)

6/10の例会の報告です。

イギリスで研修してきた祖母井真紀さんのお話

今回は、1998年〜2001年にかけて約3年半のイギリス留学&旅行記報告でした。

今回発表いただいた国々。
@ギリシャ
Aトルコ
Bオランダ
Cドイツ
Dチェコ
Eスイス
Fフランス
Gモナコ
Hスペイン
本当は、もっとたくさんの国に行かれたようですが、今回の写真は上記の国でした。羨ましい、の一言に尽きる写真と訪問国数です。
真紀さんは、特に行き先を決めず、ひとつの国に3から4日くらいの滞在をする形で様々な国を主に列車で回ったようです。

さて、そしてメインのイギリスへ。
真紀さんはイギリスではまず最初にボランティアに参加し、その後カレッジに通ったそうです。元々、イギリスにボランティアをするぞ!という気持ちで参加されたそうですが、ある観光地で出会った一人の車椅子の障害者の方との出会いで、彼女の気持ちに変化が起こったそうです。その方が坂道を苦労して上がっているように見られた真紀さんは、"May I help you?"と声をかけると同時に、その方の車椅子を押したそうです。するとその方は"No, thank you."という答えが返ってきました。自立を重んじるヨーロッパ。できることは自分でする。そんな考え方に初めて接した瞬間だったそうです。ボランティアをするぞ!という気持ちで意気込んでいた自分の傲慢さに気づいた瞬間だったそうです。

それでは、真紀さんが参加した2箇所の施設でのボランティアです。

★Grange Wood★
ここはSCOPE (for People with Cerebral Palsy)という脳性麻痺支援団体が運営する脳性麻痺の成人の方たちが利用している施設。ロンドンから北東に1時間くらいのコルチェスターという町のケルベダンという村にある。(地名あってますか?真紀さん??)

ここで少し、イギリスのチャリティ団体について。
このSCOPEはイギリスのチャリティ助成財団によると、1995年から96年度では資金調達が7番目という上位にある。(最近の資料は見つけられませんでした・・・)
イギリスは、民間の非営利団体を総称して、「ボランタリー・セクター」というが、このうち準政府機関であるチャリティ委員会(1853年「公益信託法」制定時に設置)に登録された団体を「チャリティ」という。(登録制になったのは、1960年「チャリティ法」制定後から。登録したら税制上の優遇措置が得
られる。)ちなみに、「チャリティ」の語源は、ラテン語で「愛」「慈善」を意味する。「カリタス」(caritas)

Grange Wood(以降略してGW)は、平屋の建物4棟で形成。ほぼ全員に個室が与えられ、部屋によってシンク付、・シンク&シャワールーム付など様々。ホイストが部屋には設置されている。利用者は30名。ここはイギリスではかなり大きい施設。真紀さんがいた頃から解体の話があったらしいから、すでに解体されているかも?1ユニットに7〜8人ずつ。スタッフは誰がどのユニットを担当するか決まっていて、1ユニットに7〜8人が配置され、一日3〜4人程度。週40時間労働。人員不足の場合は、福祉専門の人材派遣から。

ガーデニング本場のイギリスだけあって、専属のガードナー・庭師がいた。彼女はこよなく庭を愛していて、利用者にも好かれていた。やはり、ほとんどの利用者が一日を施設の中で過ごすので、目に見えるものは少しでも美しく!という気持ちがあった。一年中、中庭は花でいっぱい・・・この中庭には利用者のどの部屋からもつながっていて、出ていくことができた。

利用者は、いつでも許可なしで外に出かけられる。施設の職員の言葉。「彼らの生活に対して、アドバイスはできるけど、阻止することはできない」と。実際、外出しても遠方に行く人や帰ってこない人はいなかった。だから、スタッフ総出でいなくなった利用者を探すこともない。自由に外出できるから、かえって反抗をしないのかも?

車椅子の男の子、Johnは言葉が使えない、手足も動かせない。手を上下にのみ動かすことができる。彼の前にはたくさんのスクエアが置かれていて、彼の好きなものや生活の中心となるものが並んでいる。このボードをたたくことで、またスタッフが「これ?」と彼に聞くことで意思疎通を図る。彼は、「マカトン」というコミュニケーション手段についても勉強していた。

Activityも充実。プールに行ったり、Sailingに行ったり。女性にはマニキュアをぬってあげてお洒落をしたり。真紀さんが興味を持ったのは「カメラクラブ」。アマチュアのカメラマンが毎週施設に来てくれて指導してくれる。利用者はシャッターを押すだけでも満足するそうだ。作品は廊下などに展示。これを見習って真紀さんも現在、「いつきの里」(現在、真紀さんが勤務する知的障害者の施設)でカメラクラブを発足された。(でしたよね?)

1年の最大のイベント、クリスマス。12/25までにたくさんのプレゼントが届くが皆あけずに我慢、我慢。施設内には、クリスマス専用の郵便ポストを設置。イギリスでは、いわゆる日本の年賀状のような感覚でクリスマスカードを家族や親しい人たちに送る。施設内の郵便ポストには、利用者・スタッフが毎日誰かに送れるように設置。当番制で利用者の一人が郵便係になり、配達する。12/25まで、毎日誰かからクリスマスカードが届く。
このクリスマスのOpening Celemonyの時、一人の利用者がカレーを食べていた。彼は、毎日カレーばかり食べる。誰も彼にカレー以外のものを食べるようにすすめない。GWには栄養士はいない。食へのこだわりが薄いようだ。職員曰く、意志決定の問題か、嫌いなものは食べさせれない、という。一度、日本人のボランティアスタッフがそのことでクレームをつけたらしいが、「イギリスではこうなんだから、嫌ならやめてくれ」という返事が返ってきたらしい。いかにもイギリス的、というか・・・イギリスらしいユーモアのある写真があった。最初、見た時は何だか分からなかったのだが、「リニューアルオープンは○月○日」というサインが飾ってある。実はこれはトイレの写真。壊れてしまったトイレの使用開始日を祝って(?)誰かがデコレーションしたらしい。

真紀さんは、GWで約一年間過ごす。ここでは、食事と住居が提供され、月約¥40,000が給料として支払われる。
Community Service Volunteer
http://www.cecj.net/programe/e_volunt/top.htm
真紀さんが参加したのは、「イギリスボランティアホリデー」と言って、いわゆる、イギリスでフルタイムの福祉ボランティアに参加して、長期滞在をし、英会話力や国際感覚を身につけよう!というもの。普通の留学より安価で行け、イギリス文化に直接触れることができ、通常の語学留学よりイギリス人と接するチャンスが多いので最近では人気のある留学パターン。CSVはイギリスのチャリティ団体だが、こういったプログラムの派遣事業を行っている。

★Winged Fellowship Trust★(以後略してWFT)
Winged Fellowship Trustの英語版公式HP www.wft.org.uk

真紀さんとWFTとの出会いは、GWでボランティアをしていた時、ある女性がよく利用していた所から。真紀さんは、WFTへ彼女を送迎していたのだが、彼女は出かける前から本当に楽しみにしていて、迎えに行くと「帰りたくない」という位本当に楽しんで帰ってくる。いったいそこには何があるのだろう・・・というのが彼女をWFTへと導いた始まりである。

WFTは、身体障害者や高齢者のゲストのショートステイを目的としたホリデーセンターを運営するイギリスのチャリティ団体。イギリス全土に5箇所のホリデーセンタ−を運営し、毎年約7500名のゲストを受入している。ゲストたちへのプランは1週間単位で構成され、毎週ではないが、例えば、Altzheimer's Week, No Smoking Week, Youth Weekというように、参加者を絞り込んだWeekを作っている時もある。ゲストは、自分がどの施設にどの週に参加するかを決めることができ、参加申込書はかなり細かくなっている。(当然ではあるだろうが)
例えば、自分はどういうときに介助が必要か(食事、洗面、着替えなど)、病気の症状やかかりつけの担当医の記入などが義務付けられていた。各センターは、当然バリアフリーの環境が整い、シャワー設備、カラーテレビ、ラウンジ、バー、売店などが完備。ゲストのために買い物、テーマパーク、公園への訪問、映画、水泳、ディスコ、観光旅行など、毎日盛りだくさんの企画が催される。このサービスは、ゲスト自身の余暇も目的ではあるが、介助者にゲストが参加している間、余暇を取ってもらおうという目的も達成している。実際に、いつも介助してくれる妻にホリデーをあげたくて・・・という理由で参加している障害者もいたそうだ。

真紀さんは、このWFTをカレッジの卒業論文の題材とし、研究を兼ねて二回ボランティアとして参加する。真紀さんは最初、せっかくのホリデーなのに、旅行にも行かず、こんな施設で1週間も過ごして何が楽しいんだ?という疑問を持って、参加したのだが、実際には自分も障害者たちと一緒になって楽しんで帰ってきたそうだ。利用者は、毎日いろいろな所に出かけられる。時にはDay Tripでスコットランドやベルギーにも出かけた。

ボランティアには様々な人が参加していた。現役のドクター、バッキンガム宮殿の衛兵、学校の教師、高校生、なかには強制的に出所間近の囚人。(これはGWだったかも?)WFTの場合、施設までの交通費と食事・住居が提供され、DayTripに参加する場合は、ゲストが払う金額の10%の料金で参加できる。いわゆる、安価でちょっとした海外旅行が経験できるというわけ。

最後に、質疑応答があり、例会終了。

イギリス人と日本人のボランティア精神は違う。日本では、お金をもらわなければボランティア、という考えが強い。誰かのために何かをしてあげようという気持ちが強いのでは?イギリスでは、Holidayをすごす為に参加している人が多く、「してあげるんだ」という気持ちの人はいない。一緒に楽しむ。
それを象徴するかのようなエピソード。真紀さんはイギリスについてすぐの頃、週2回の休みを利用して近くに住む年配の女性のところに英会話を習いに行っていた。彼女はボランティアで外国から来た若者に英会話を教えていたらしいが、真紀さんに「ケンブリッジ英検」の受験をすすめる。ある日、彼女は突然GWにやって来て、真紀さんの休みを増やすように上司に交渉する。なぜなら、彼女は大事な試験を控えているから。そしてExtra Holidayを得た真紀さんは、プライベートレッスンで彼女の授業を受けるが、彼女は頑としてお金は要らない、と言う。「若い人がこうやって、英語を身につけて、覚えてくれて、幸せにしているのを見るのが私の幸せ。」と。

 イギリスのボランティアの歴史は深い。その歴史をさかのぼると、「相互扶助」や「慈愛」にたどりつく。浮浪する下層貧民の増加が深刻な都市問題となった16世紀末。国家としては最初であろうといわれるエリザベス救貧法の制定は1601年。その後のイギリス資本主義の形成・発展の歴史は、同時に労働者階級の貧困化による社会問題への対応の歴史であった。1834年「新救貧法」・1942年「ベバリッジ報告」・1946年「国民扶助法」・1948年「国民保健サービス法」。こういった公行政に平行して、開拓的で先駆的サービスを担うボランタリー部門の活動がイギリス社会福祉のもう一つの特徴であろう。
 イギリスは約50万団体のボランタリー・セクター(民間の非営利団体)があり、チャリティ委員会に登録された団体(チャリティ)は約18万団体ある。お気づきだと思うが、真紀さんが参加したボランティア組織の運営はすべてこの、「チャリティ団体」である。市民一人一人の小さな活動が社会を支え、社会を変えるという市民の価値観が、現代までのイギリス社会福祉を支えてきた特徴と言えるのかもしれない。
 今、日本では、「地域福祉」の推進が提唱され、NPOやボランティアという言葉が一つのブームになっているように思う。今後の社会福祉・地域福祉の充実は利用者中心のサービスを提供できるよう、利用者自身や介助者の参加と選択によってサービスの内容を検討し、社会的仕組みとして地方自治体が決定すること。さらに、そのサービスの供給をこういった民間の団体と協力をして、行政がどこまで費用負担をできるか明確にしていくことにあると思います。しかし、隣に住んでいる人の名前が分からない、という日本の今の現状では「住民参加」の達成は、なかなか難しいかもしれないですね。

文責 坂本 有希

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