2003年11月11日に行われたえひめ北欧から学ぶ会例会の報告です。
今回は、松前病院の盛次義隆先生より北欧の高齢者協議会とオンブズマンについて発表していただきました。
北欧の高齢者協議会とオンブズマンについて
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最初に、今回の発表する前に起こった日本での事例があげられました。
◆ヘルパー同伴による外食が介護保険サービスとしては否定された。
・抑鬱気分を伴った70代後半の男性
・夫婦二人暮らし、本人は脳出血後遺症による片麻痺。妻は虚弱。
・日常的にヘルパーを利用し、通院、リハビリを行っていた。
・二人の生活に共に疲れ、食欲がなくなり、脱水、栄養障害で時々入院。
・鴨居を見つめ、自分で首をつることができればと常に思っている。
・唯一の楽しみは減るパートの通院。
↓
主治医から、病院の帰りにヘルパーと外食すればいいと勧められ、喜ぶ。
↓
ヘルパーは同意したが、事務所が役場に問い合わせると違法な介護サービスとして否定。
つまり、ケアプランとしてヘルパーとの外食を申請するが、介護保険サービスとしては、否定されたということ。
・・・そこで法的根拠に基づいて検討してみる。
介護保険法第7条6によると、「・・・その者の居宅において・・・」
とあり、施行規則でも「外での介助」は入っていない。
よって、外食が認められないということになるようだ。
・・・では他県ではどうだろうか?
例 山口県 訪問介護の留意点
・居宅以外において行われるもの→算定できない。
・通院・外出解除における病院内などの移動介助については、
居宅での準備を含む一連のサービス行為として算定可能。
↓
スタートが居宅ならOK
…行政解釈としては… ・準備→散歩→お茶=OK
・病院で待ち合わせ=×
この場合どうするか?
・保険者である市町村は当然、法に縛られる。
もし、保険者が認めても、会計検査院の監査で否定されれば全額返済しなければならない。
☆ 能力に応じ、自立した日常生活を営むことが目的
→ この中に移送サービス含まれない
◆病院の浴槽を用いたヘルパーによる入浴が否定された。
・ 脳梗塞による右麻痺があり、身体は硬直、自宅の浴槽では入浴できない。
・ 胃瘻栄養を実施しており、ほぼ植物状態。
・ デイサービスの入浴のみ利用は出来ない。
→ 駄目になった。「お風呂屋さんではないんですよ!」
・ 病院の特殊浴槽を借り、ヘルパーによる介助で入浴した。
・ 居宅外でのサービス給付ということで否定されようとしている。
・ 訪問入浴車を利用した自宅での入浴へ変更
↓
介護保険法ができる前より融通が利かなくなった→赤字になるから??
「介護」における日本の解釈…本人と家族の問題
→少しは法律でサービスを与えますよ。
足りない分は自分で払いなさい。
◆老健の食事がまずくて改善されない。
・ 家族が通っている老健の食事がまずい。
・ どこに言っても改善されない。
→ たとえばレストランは、「まずい」とつぶれ、「おいしい」と流行る。
一方、老健は地域によって設置数が決まっているので、
つぶれる心配はない。つまり、競争できていない。よって、
利用者に選択の余地がない。
県では一食あたりの単価が決められている。
苦情処理…国保連合会が中心→数が多い→市町村で持つべき
→話を聞くのみの対応が多いようだ。
・県の監査では試食することは無い。
→ 職員の試食は?…向上意識があるかどうかによって違う。
栄養が十分か、給食数、単価のチェックなど規定項目の確認のみ
・現状では入所まちが通常で、施設側優位であり、利用者の
デマンドを満たすことは出来ない。
・法律上、施設数は計画範囲内であり、選択の余地は無い。
問題点の整理
◆法自体の問題
・ 介護保険法で訪問介護については規定されており、制限されている
ため、ニーズを満たすことが出来ない。
・ 拡大解釈には制限があり、会計検査院の監査で引っかかると
ペナルティーがある。
◆苦情処理制度はあるにはあるが、機能していない。
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ここから、本題の北欧の制度についての発表となりました。
◆ スウェーデンの高齢者協議会
(スウェーデンは医療は県、福祉は市町村という仕組み)
☆県の高齢者協議会(ストックホルム県)
・救急医療・プライマリケア・高齢者医療
・委員長は政治家である県の医療担当理事がなる。副委員長は高齢者団体から任命
・5つの高齢者団体
政治的には中立なものから左・右の立場をとっているものがある。
PROは構成員190000人、SPFは120000人などで残りの
団体は50000人以下
・これらの団体から8名の代表が参加しており、それぞれの政党からの代表5名
・年に6回定期的会合を開き、臨時会合も合わせてだいたい10回くらい開催
・決定権は無い→ひとつの圧力団体のような感じである
・早く情報を得て、経済的な問題や構造的な問題について政治家に影響力を及ぼすこと
・委員会は3時間位で、委員会前にはワーキンググループを形成して準備
・県の高齢者関係予算等については県から委員会に対して意見を求めることになっている(例としてレミス制度についてのコメン
トが渡辺まどかさんから説明がありました。)
・会議の秘書は政治家が連れてくる。会議ごとに旅費が支給
※ 委員長が積極的に関与するかどうかでかなり変わってくる。
時には一方的な情報しか与えられないこともあるから、
政治家から見た情報だけが与えられたり、高齢者団体か
らの質問が重要視されないこともある。
→情報収集が大事。
※ プライマリケア、精神医療、老年医療、救急医療の4つの作業
部会を設けて、これらの部会でそれぞれの領域について現場
に行き、話を聞き、問題を把握して持ち帰るという方式をとっている。
→プライマリケア…小さな病院が行う。スウェーデンでは医療は公営、
開業医はほとんどいない。
☆市レベルの協議会
・ 90%の市において協議会が設置されている
・ スウェーデンの場合は高齢者団体からの推薦と政治家は政党より
・ 市レベルにおいては高齢者ケアの問題、交通問題、都市計画上で
のアクセスの問題などが扱われている
・ 毎月開催されており、政治家、高齢者団体福祉局職員で形成され
ている。市によっては政治家抜きで行われているところもある。
・市によって5〜20名の委員で形成されている。ほとんどの市では
手当て、旅費、秘書等の援助がある。
☆利用者委員会
・現場での知識を得るために協議会の下に各施設ごとの利用者
委員会が設けられている
・ 利用者委員会はナーシングホームや老人ホームなどにあり、
多くは職員代表3名、入居者代表2名、親族代表2名、高齢者
団体代表3名で構成されている。
・ 職員の介護の問題や食事の問題などがここで協議される。
住民代表としての入居者委員は毎年交代し、推薦で選ばれている。
・ この10年で各地に利用者委員会ができた。しかしながら、
現在まだ委員会ができていないところもある。
・ 良いところとしては現場知識が政治家以上であり、具体的な話が
できるところにある。住民代表といっても90歳以上の人のことが多い。
・ 利用者委員会はだいたい年間4回開催それぞれの施設で行われる
・例えば、ひとつのナーシングホームで食事が悪いという意見が入居者
や親族から出されれば、高齢者協議会がその施設の厨房まで行き、
確かめた結果も合わせて意見書を作る。
・ 手当ては無く、ボランティアである。
・毎回の会議では建物などのハードの問題、食事の問題、医療的な
問題、職員問題をテーマにすること、議事録を高齢者協議会に毎回
送ることなどをプロトコールとして書かれた書類があり、それに従っている。
・ 職員問題があがっているかというと仕事に満足している職員がいると
いうことは良い仕事ができていると考えられているから。
・ 高齢者・職員の利益を守ること
・ 良い提案、重要な問題点などが協議会に挙げられる。
・ 高齢者協議会からの意見書は県レベルでは月1回、市レベルでは
月に1〜2回、委員会レベルでは月に2〜3回提出している。有権者
でも高齢者は大きなグループだから有効に作用している。
◆デンマークの高齢者委員会
・ 高齢者委員会は県および市に設置され、1998年より法律的に
設置義務となった。
・ 60歳以上の高齢者から選挙で選ばれ、任期は4年。
例 Sollerod市の高齢者委員会
・人口は31,572人、約8500人の高齢者がいる。
市の職員は3000名、20億Krの収入があり、そのうち
8億Krが貧しい自治体にまわされるほど裕福な自治体
→それだけ裕福な人が多い!?どうしてこんなに多額の収入が
あるのか、taxが高いのか?などの質問が出ていました。
・ 選出された高齢者委員会の委員は7名で、8つのワーキ
ンググループを作っている。総勢45名で、住宅、障害者
年金、プライエム、在宅ケア、交通、情報機関誌、施設など
へのコンタクトグループだ。情報機関誌のグループは年に
3回機関誌を作成後、50名で8000軒に配っている。市か
ら切手代予算が下りているがそれをこうして節約することで
車椅子の人たちと年に2回海外旅行をしている。手当てや
交通費はなく、すべてボランティアだ。事務費は市から出て
いる。7万Krが切手代。
→デンマークはワーキンググループ好きという意見。
切手代を節約して海外旅行のところでは、日本とは大違い
であることが意見として出てきました。日本の場合は、法で
定められたとおり。つまり、AならA。BならB。という風に例外はなし。
それだけ地方分権が進んでいる、という意見も。
◆ 高齢者オンブズマンについて
高齢者オンブズマン制度は世界で最初にノルウェーで取り入れられ、
次にストックホルムそしてソルナ市にできた。今回の発表では、ソル
ナ市のある一人の女性の例を取り上げられました。当日は各自に配
布した資料を黙読してもらい、質疑応答という形で進めました。
一部、抜粋して報告します。
●彼女は、看護婦で、地区看護婦→児童看護婦、そして高齢者ケア
局で医療責任看護婦をしているときに、前任者が辞め、声をかけられ、
2回の面接を経て現職に就任した。教会で福祉活動をするダイアコー
ンでもある。
→この2回の面接はソルナ市の社会福祉委員会(行政機関)が実施。
北欧では、最終的には行政が選ぶが、それでも中立。信頼が日本と
は全然違うのだろうという意見。それで中立が守られていて、それが
当たり前である。
一方で日本では行政に対しての信頼があるだろうか?情報公開がき
ちんとなされているだろうか?という意見も。
● 99年に議会で可決されソルナ市での高齢者オンブズマンの設置
が始まった。彼女は市の執行委員会から任命された高齢者オンブズ
マンで市の職員として活動する。職場は市の広報部に属し、身分は
市の職員で政治家より任命されているが、政治的に中立であり、行政
官としての責任は負わないこととなっている。
●仕事の内容について。99%が高齢者問題で、何らかの不服を聞く
こと。そして高齢者やその親族への助言・サポート・紹介を行う。電話
や手紙、電子メール、または直接面接して話を聞いている。介護ケア
や医療における問題、交通や移送サービスの問題、公園の照明とか
都市の問題、そして孤独や悲しみ(死別)の相談も多い。年金が少ない
とかサービス料金の請求が間違っている、地区作業療法士による補助
器具の処方が厳しいなどの苦情もある。家族や職員の対応の仕方が
不十分な場合も多い。また、家族による介護に対する苦情も含まれる。
そして、苦情を言おうにも担当者が捉まらない、わからないなどの場合
も彼女のところに電話がかかってきて、担当者とのコンタクトを図る
こともある。多くは電話でこれらの高齢者・親族の話をじっくり聞き、
助言をしたり照会したりしている。2ヶ月に1回、政治家、社会局へ報告
書を上げ、懇談する。年に1回、市の執行委員会にこれらのまとめを上
げている。
●できるだけ話しやすいようにしているがオンブズマンは一人しかいない
ので相当ストレスがかかる仕事だと言える。・・・ストレスの解消はどうして
いるのかという質問に対して、この仕事は大変な仕事だし、経験が必要
だし、大胆に発言することも必要だ。スウェーデンで最も有名なセントル
カス財団の教育分析、療法を受けている。政治家や担当部局に高齢者
や親族の不平を伝えていくことはいい顔をされない。時には疲れてもうい
いやという気持ちになることもある。少なくとも一般市民の信頼を得てい
る限り、仕事を続けていくのが大事だと考えている。同時に親族等が花
でも持ってきてくれて、お礼を言われると元気が出てきて、やる気が起き
る。チーフの中でも肯定的に捉えてくれる人もいるし、彼らの助けにもな
っていると感じる。
→オンブズマンがきちんとした分析を受けていないとカウンセラーに
なれない→カウンセラーになる為の仕組み。
かなりハイレベルな教育であるという意見
●(日本の告発型オンブズマンとは違って)、問題を発掘していくことは
しない。オンブズマン設立の動議にはこの問題発見活動が含まれてい
たが、市の執行委員会の決定にはそれは含まれなかった。高齢者の
不平に対して、対応していくのが職務となっている。高齢者・親族と職員
が同席して問題解決に当たることが多いので、それで誤解が解けること
も多い。社会サービス関係では帳票などの調査権限は無い。医療関係
では可能。ソルナ市ではオンブズマンの権限を増やす動議が出ている。
匿名での相談、不平の解決を求めることも可能。
●その他、オンブズマンの身分・生活保障について・オンブズマンの意識
のあり方(利用者の立場に立つ)・移民者が多いソルナ市では特に言葉
の問題があること・苦情の例・サービスに不服がある場合などについて
取り上げられているが文書が長いので省略します。
最後に、皆さんからの質問・議論で終了。一部内容をご報告します。
・北欧諸国での印象は?
スウェーデン…施設がとてもきれい。汚い部分はないように見えたが、
オンブズマンに聞くと、たくさん苦情が出てきた。
デンマーク …その場で文句や意見を言い切っているように見えた。
よって、苦情件数は少ないようだ。
ノルウェー …苦情を言い切れていないみたいだ。
フィンランド…あまり考えてないかも!?
・特別養護老人ホームは建てるのは行政。中のスタッフは委託。
入札によって決めるので、市も入ってくる。あるヘルパーの内部告発
があり、民間はどうも…?ということで後退しているらしい。
・監査については、北欧ではまず、アンケート調査。
利用者と家族が満足していればいいという考え。一方、日本では利用者
にアンケート調査ができていない。
・40人分の措置費だと、北欧では基本的に何に使ってもOK。
内容は施設ごとで決めるが、日本の介護保険では細かい規定が多い。
北欧にはこのような細かい規定はあまりないようだ。
・オンブズマンは主に在宅系のサービス。彼らを通じてよりよい在宅
サービスができるようにと作られた。
…いろいろ意見が出てくる中で、面白い意見がありました。
☆北欧の人たちのほうが知的な大人に育っているのでは??
要因としては…
・システムの違い
・行政へ意見が届きやすい。日本とは大違い
・自分たちで考えて意見し、そういうような教育が実施されている。
たとえば、選挙時期には小学校で模擬投票。子供のころから政治
が近くに存在しているのも原因では?
そのほかのも、いろいろと面白い意見が出ていましたが、総評としては
日本と北欧は大違い、という意見を皆さんがもたれたようです。行政の
あり方、国民一人ひとりの考え方、どれをとってもまったく違うのが歴然
でした。しかし、そんな日本にしてしまったのは私たち国民のせいでも
あります。まずはどうやって改善すべきか、日本は今度どんな道を歩む
べきか一人ひとりが考えた夜だったのではないでしょうか。
奥村芳孝さんから寄せられたコメント
高齢者協議会と高齢者オンブズマンの報告を読みましたので、コメントを。
文責 坂本 有希