2004年2月10日に行われたえひめ北欧から学ぶ会例会の報告です。
大野様、資料提供ありがとうございました。
今回は、「日本介護保険制度下の訪問介護の現状とカトリーネホルム市のホームヘルプサービス」というテーマで、東松山在宅ケアセンター大野 千恵子さんに行っていただきました。大野さんのレジュメを基にご報告します。
T.ホームヘルプサービスの歴史的経緯
1.ホームヘルプサービス前史
1)1956年(S31年):長野県上田市、諏訪市等13市町村による「家庭養護婦派遣事業」
*市町村社会福祉協議会実施主体。
*不時の疾病、障害等のため家庭内の家事処理者が家事を行なうことが困難となった場合。
*原則1ヶ月以内
2)1958年(S33年):大阪市「臨時家政婦派遣制度」→「家庭奉仕員派遣制度」
*民生委員連盟に委託
*独居被保護老人・家庭奉仕員の派遣により問題解決の見通しが有る事。
3)1959年(S34年):東大阪市 「老人家庭巡回奉仕員制度」
1960年(S35年):名古屋市 「家庭奉仕員制度」 神戸市 「ホームヘルパー派遣制度」
1961年(S36年):東京都 「家庭奉仕員制度」
2.国制度のスタート
1)1963年(S38年)
老人福祉法制定、家庭奉仕員派遣事業が明文化。
*施設保護中心施策から在宅福祉サービスへ
*派遣回数 週1日以上
(週一日しか派遣しないことを「一日以上」と法律では言っている)
*日常生活を営むのに支障がある老人の属する低所得家庭であり、家族が老人の養護を行なえない心身状況にある場合
2)1970年(S45年)
「ねたきり老人家庭奉仕員事業運営要綱」
*在宅寝たきり老人に対する援助施策
*65歳以上で常に臥床している低所得者(非課税世帯)
※当時のことについて、
大野さんの経験を基にお話しがありました。S52当時、河内町には寝たきりの方が36〜38人位いらっしゃいました。翌年には約半数くらいに減少する状況でした。その頃、川内にはたった一人のヘルパーさんがいらっしゃいませんでした。独居で低所得の方にのみ、5日間で約10人の方のお家をその方が一人で訪問していてそれが精一杯だったそうです。
在宅ヘルプのない時代、せっかく施設で機械のお風呂を使わせてもらうようになっても例えば、施設に車で行くことで、娘さんの援助が受けられなくなることを恐れて、当事者の方はそのせっかくのお話を
受け入れるまでにもとても時間がかかっていたそうです。
3)1982年(S57年):「老人家庭奉仕員派遣制度」改正
*派遣対象世帯の拡大〜所得税課税世帯に有料制度の導入
*派遣回数・時間数の増加〜2回/週→4時間/日、週6日、延べ18時間
*ホームヘルパーの採用時研修制度導入(70時間)
3.平成元年度の要綱改正
1)1989年(平成元年)「ホームヘルプサービス事業運営要綱」
*ホームヘルパー10万人目標
*実施主体:市町村、社会福祉協議会・社会福祉法人・民間事業者に事業委託
*派遣対象:老衰や心身の障害等の理由により日常生活を営むのに支障のあるおおむね65歳以上の者のいる家庭であって、高齢者または家族が高齢者の介護サービスを必要とする場合。
※印象としては、ずいぶん柔軟になったそうです。
*サービス内容:身体介護・家事援助・相談助言の3区分
*市町村サービス調整チーム活用(市町村にある関係機関が募って作成)
2)1994年(H6年)
新ゴールドプラン
*ホームヘルパー17万人目標
*チーム運営方式(チームヘルパーと組んでサービス提供)
*24時間ホームヘルプサービス(スウェーデンやデンマークをモデルに、モデル事業として開始)
※松山でも、にぎたつ苑でモデルスタート。一日五回の巡回でした。本来なら施設や病院にいるような重度な方が在宅でいらっしゃったそうです。北欧をまねた介護制度がいよいよスタートした頃でした。
3)1998年(H10年)
*人件費補助方式から事業費補助方式(出来高払い)
※年間数百万円で委託していた形式から、介護保険準備段階へと。
4.現在のホームヘルプサービス
1)2000年(H12年)介護保険制度施行
2)2003年(H15年)支援費制度
U.介護保険制度下のホームヘルプサービス
※ゴールドプランの頃は、利用者を増やすことが目的でした。そのため、いろいろな人が利用できました。しか、し介護保険では、介護認定の厳しさと1割の自己負担によって利用者が一番大変になる状況へと変化していきました。よって、状況的にはいきなり自立を強いられてしまう、という様子だったようです。
1.社会福祉制度から社会保険制度へ
1)措置から契約へ
2)応能負担から応益負担へ
※一番利用者に影響を大きく与えたもの。所得に限らず一律負担の応益負担のため、弱者への負担が大きくなりました。それまで多くの人がヘルパー費用は無料だったものが、介護保険によっていきなり1割自己負担となったため、現場はとても混乱したそうです。
3)市町村委託事業(非営利)から介護保険事業所(営利)へ
2.介護保険制度下のホームヘルプサービス
1)対象:要介護認定を受けた人(1号被保険者及び2号被保険者)
2)サービス内容:身体介護・複合型介護・家事援助の3区分。サービスの標準化が言われる。
※なるべく複合型介護にしないでほしいという国の支持がありましたが、じっさいにはこの型の介護が一番多いという現状。
※措置制度のときは、実際に訪問に行った時の状況に合わせて介護を行えました。例えば、今日は入浴の日であったとしても、その方が熱を出されていたら別の日に変更することが容易でした。しかし、こういった相談援助が介護保険によってできなくなりました。なぜなら、計画通りに請求をしないといけないからです。そのため大野さんがいらっしゃる現場では、実際に行ったサービスと計画していたものの、後から調整しなおす作業が加わることになりました。
3)従事者:介護福祉士、1級・2級・3級ヘルパー
サービス提供責任者:登録ヘルパー(非常勤ヘルパー)10名に1名。もしくは、稼動時間数を450時間で除した数
※10名に1名は、北欧とは大違いだそうです。
4)365日24時間サービス
※これは改善点ではあるのですが、実際には24時間にすることは不可能だという現状のようです。措置制度は9時〜5時のサービス。一番利用者の方がヘルパーを必要とする朝と夕方以降にはありませんでした。24時間サービスを現実的に行うには難しいものです。モデル事業で行っていたにぎたつ苑の24時間サービスもストップとなりました。
※現場のヘルパーの声には、こまぎれ介護になったとあります。時間が決められているため、ゆっくりサービスができないという声がよせられます。それはまた、利用者からの声も同様のようです。
5)費用負担の増加
3.2003年介護報酬単価の見直し
1)身体介護・生活援助の2区分
※家事援助評価してほしいと訴えることによって、少しだけ実ったそうです。1,300円代が2,000円台になったそうです。家事援助は本当に深いサービスなんですよ、という風に大野さんからのお話がありました。
2)巡回型の評価
※単価があがったそうです。
3)サービスコード 396種類→655種類へ
※別表による説明あり。
(表は省略します。概略については下記に記載)
V.ホームヘルプサービスは在宅ケアの要
※この章は、大野さんが実際に現場で感じられたことです。
1)ひとり暮らしの不安を解消
※ヘルパーが入ることで、独居の方のところに毎日同じ人が同じ時間に来られます。これによって信頼関係が生まれ、たとえ、お金しか信用していなかった人であったとしても、そのような気持ちを抱くようになるみたいです。
2)家族介護者お負担軽減
※ヘルパーが第三者として家族関係に入ることでの利点。
3)サービス内容、時間帯の拡大により在宅生活の可能性が拡大
4)自立支援〜「察し」「甘え」の文化の日本での自立支援とは?
5)家族関係の調整機能
W.スウエーデン・カトリーヌホルム市のホームヘルプサービス
※大野さんが実際にスウェーデンでヘルパーさんに同行して感じられてことについてまとめてあります。
1)必要量は措置決定(介護認定者)〜複数名の合議
※必要量とは、その人にとってどのくらい必要か、ということ。一方、日本では先に外枠が決まっていて、その範囲内でのやり取りになっています。
2)施設(集合住宅)と在宅の区分がない。廊下を歩いて訪問しながら、アラームによって車に乗り換え道路を行く。
※これはヘルパーにとってはずいぶん厳しいのでは?と感じられたそうです。
3)必要な時、必要なサービスを提供
日本は計画訪問〜変更には複雑な手順と書類処理、(利用票・提供票の変更)が必要
※この点の柔軟さが日本では難しい。
4)ナイトパトロール 1晩に2チームで150件の訪問(圧倒的に量が多い)
施設・在宅の区別、障害の区別、年齢の区別なし。日本では縦割り、それぞれに別々の法律で運営されており、許認可も別々。しかし、それだけにどのような対象者に対しても的確なケアができるということが求められていることになる。
※まず、対象となる方の幅がとても広い、と感じられたそうです。また一晩で回る件数も、例えば、にぎたつ苑では一チームが一晩で50件くらいでした。これは実際には多いほうになるそうです。
5)大きく違うであろう、家事へのこだわり。
※とにかく、日本と北欧では絶対的に違う点。
スウェーデンでは、サービスハウスに業者が入って一気にお掃除。これは二週間に一度くらいだそうです。しかし日本では、「家事へのこだわり」があります。これはあくまでも文化の違いでしょう。この部屋の掃除の仕方はこう…という風にその方によって決まっています。また、食事もスウェーデンではパンにバターでOKですが、日本ではそういうわけにはいきません。その人の口にあわせたものを作らないとサービスになりません。そういった点からも大きく違うのだなあと感じたそうです。
6)コンピューターによる情報管理
日本:誰のための何のための記録?
※実際には、監査のための記録が多いそうです。
7)常勤ヘルパーによる巡回型ヘルプサービスがメイン?
<カトリーネホルム市>
写真による説明
<東松山訪問介護事業所>
写真による説明
※ヘルパーには二種類の方がいらっしゃいます。まず一つは、登録ヘルパーで、こちらは直行直帰型で後で報告をするそうです。もう一つは、常勤ヘルパー。事務所に出勤をし、仕事カードにしたがって巡回をします。彼らは巡回する大枠の時間が決められているのですが、実際にはその通りにはなかなかいかないようです。しかし介護保険では時間通りに巡回しないといけません。そのため、直行直帰型の登録ヘルパーのほうがベストであることがあるそうです。また、常勤ヘルパーのほうが給料が高額になるため、たくさんの人数は雇えないという現場の状況もあります。しかし一方で、利用者の方が入院すると登録ヘルパーの場合は時間給制のため、収入が愕然と減ります。よって、収入が不安定という現状。そういう状況から、どうしても生計中心者がいる主婦の方がこの登録ヘルパーの主な労働力になります。
※サービスコードによる単位算定
【巡回型サービス】
@モーニングサービス 289単位
A昼食 231単位
B夕食 231単位
Cイブニングサービス 289単位
D深夜帯 347単位
合計 1,387単位
30日間 1387単位×30日=41,610単位→¥416,100
要介護5の方の場合支給限度額 35,830単位
差額 5780単位(57,800円)は自費
介護保険自己負担分35,830円をプラスすると合計額93,630円
※¥35,830とは支給限度額¥358,300の自己負担1割分で、実際には上記のサービスを受けるためには、この自己負担分にプラス差額の¥57,800、合計¥93,630を支払わないと受けることが出来ません。こういった現状から、介護保険では24時間サービスは無理だともいえます。
【介護報酬新単価】
2時間滞在型サービスの場合
@身体介護4 667単位
A身体3生活1 667単位
B身体2生活2 568単位
C身体1生活3 480単位
D生活4 374単位
※このように、
同じ2時間のサービスを受けるのでも様々な種類があります。単位の違いは、利用者の支払う金額の違いを表します。そしてこのことから、「サービスの標準化」が起こります。例えば、入浴介護はだいたいこの位だろう...という風に。
【統計資料】 2000年10月
@ヘルパー数:常勤換算76,973人(厚生労働者資料)
常勤者数:非常勤者=3:7
1991〜1999年ヘルパー養成研修修了者(1・2・3級)95万人
ゴールドプラン21:2004年までに35万人
<民間事業所では>
常勤者数:非常勤者 = 12%:88%
給与費 常勤者数:非常勤者 = 196、800:73,700
A経営状況 2000.12〜2001.1 (日本労働研究機構)
「訪問介護サービス事業状況調」:13,178ヶ所対象 4.088
箇所回答
・黒字 9.8%
・収支トントン 32.4%
・赤字 55.8%
この後、写真を見ながら、松山訪問介護事業所の説明がありました。また、実際の介護現場を見ながら、どのような利用者の方がいらっしゃり、現場がどんな風に運営されているかの説明がありました。
最後に全体での討論内容です。
●365日24時間サービスが現実に難しいのはどうしてか?
...まず、費用負担の問題です。(先ほどのサービスコードによる単位算定を参照)自己負担金額が発生することに原因があります。しかし例えば、鷹巣では自己負担分を町が補てんしてそれを可能にしているという報告もあります。
●スウェーデンは措置、日本は限度がある?
...スウェーデンの場合、限度は無限なのでしょうか。必要性がなかったらあくまでも出さないという方針。一方、日本の場合、まず最高が「5」です。そして介護認定で受けられる以上のものを受けたい場合は、自己負担が出来る人はいくらでも受けられます。つまり無限に。しかし、それが出来ない人は?
また、実際には、必要性がなくてもある福祉機器を要介護認定さえ受けられたら、リースすることも出来ます。つまり、本当に必要な人にきちんといきわたっているか?という問題も見えます。実際に、日本の介護制度には経費の無駄な部分があるのではないか?北欧はとても合理的という印象。
※特にこの辺り、北欧での措置の限度は無限なのかどうか、どういう風に判断されているのかなど、皆さんはとても興味や疑問を持っているようでした。
●専門職を窓口におくべきではないか?
ニーズ判定の問題から。
●市町村のほんの少しの負担で24時間介護は実現します。
実際に、在宅にはそんなにたくさんの費用がかからないのです。また、在宅にいても医療措置が必要な場合もあるので、その調整が必要です。
このような形で終了となりました。
専門職の方からのお話でしたので、内容がとても濃く、私自身が介護保険を理解できていない部分が多いため、十分なご報告が出来ていないと思います。もし、ご指摘・補足などありましたら、どんどん発言してください。
・・・・・・・・・・・
次回例会です。
3月9日火曜日午後7時から9時
松山市総合福祉センター
1階ボランティア研修室にて。
田中君子さんのロシア訪問のご報告とロシアからの留学生をお招きしての交流会を予定しています。
お隣の国ロシアについていろいろ伺えそうでとても楽しみです。
ぜひ、皆様もご参加ください!
文責 坂本 有希