今回は、丹下先生の「経済から見たスウェーデン」です。私たちは優れた福祉を実施する北欧の経済について学びたいと思っていました。どうしてそういうことが可能なのか、それを明らかにしたいと思っています。

 

.はじめに

(1)自己紹介と報告を行うことになった経緯

丹下先生の専門は社会政策で特に、労働問題・賃金・失業などが中心。96年から愛媛大学で働いている。今回は同僚の鈴木靜先生から依頼された。「僕は経済の先生ではない」と伝えたが、「経済の基本的なことを教えてほしいのですが…」と3回依頼しに来た。要望は「スウェーデンの福祉はいろいろ研究してきたが、背景は、経済はどうなっているのか教えてほしい」と。実際、僕もこの問題を勉強は初めて。この機会をきっかけにすこし勉強してみようと思ったが、やってみると面白かった。いろいろ報告したいところあるが、できるところから今日は報告したいと思う。

当初から、スウェーデン経済をモデルにするのは感覚的に違和感があった。たかだか900万弱の人口つまり大阪府の人口くらいのスウェーデン。やっぱりどこかで経済破綻しているのではないか、そんな小国が何故大国のモデルになるのか。なぜ、そういうものが成立するのかという疑問があった。直感的にEUの関係があるのではないかと思った。僕はよくドイツに行く。二週間の研修プログラムに学生をよく連れて行く。初めては94年、ベルリンの壁崩壊から急速にドイツが変わっていく。その中でEU統合が現実に。そのインパクトが強いだろうな。EU統合は昔からあった。50年代から戦争を起こしたドイツとフランスが仲直りして、二度とこういったことが起こらないように。それをきっかけにヨーロッパを一つの経済圏にしましょうと。この影響が強いのではないかと思う。このEUをひとつの手がかりにしながらスウェーデンの福祉を見たいと思った。

2)今日の報告の問題意識

@「9.11以降の世界の現状をどう見るか」

1.政治的教訓と課題

現在の経済状況を考えるのに絶対欠かせないのが、9.11以降。ベルリンの壁崩壊とそれ以降の9.11テロを経済問題としてどう捉えるかを考えないと、経済学は対応できない。9.11以降の世界の現状と問題になっていることとの関係でスウェーデンという国をどう見たらよいか。

特にこのレポートを書いている間に日本人が三人拉致。一方、ファルージャでアメリカ人が虐殺された報復をして、400人以上の死者。報道にも違和感があるなあと思いながらこのレポートを作成していた。中東問題。イルラエルとパレスチナの対決。アラブとユダヤの対立をどうゆうふうにまとめていくのか、一刻の猶予なし。小さなテロは防げないだろうが、先進国が協力して組織的なテロリズムを抑制するという枠組みを作るという政治的課題がでてきている。が、現実にはそれが全然駄目になっている。「戦争こそ最大の差別」。福祉の問題を考えるのは、差別の問題とセットだと思っているが、更に戦争の問題が福祉の問題になる。そういうことを政治的に考えないといけない。

2.政治的現実の背後にある経済的現実

そして特に福祉国家を考えると、テロはなぜ起きるのか。それは貧困、特に貧富の格差がある。ビンラディンがああいうテロを仕掛けるが、それには土壌がある。非常に高い知的水準を持った人がテロリストに走らないといけない非常に大きな問題、つまり貧困問題に直面したとき、解決できない問題に対して怒りが生まれる。その怒りが「富めるアメリカ」に対して向かう。これが構図であろう。貧困問題をどう解決するか、そういう政治的経済的システムをどう作るかが9.11以降の課題。そしてそういう観点から福祉を考えるべきだと思っている。例えば、戦後のイギリスの福祉国家の出発点はベヴァリッジが戦後の社会計画を作るところから。その書籍の扉に書いてあるのが、「貧困が憎悪を生み出す」。それが第二次世界大戦を引き起こしたわけだから、その貧困を取り除くために完全雇用と社会保障制度をどう定義するか。それが福祉国家の出発点。これと同様なことが9.11以降に起こっているだろう。その上で、経済的なシステムをどう作るかが大事であろう。貧困問題、格差を社会的になくし、憎悪の芽を摘み取るためにはそれを可能にするような経済システムをどうやってつくっていけばいいかが課題。

A現代の経済思想における対抗軸

現在、その経済分野の大きな潮流には二つ。一つはアメリカ、一つはヨーロッパ。「アメリカの市場原理主義」と「社会的ヨーロッパ」。前者は「途上国の経済を自由化し、市場原理の作用領域を広げれば、途上国の経済は鍛えられ強くなり、人々の所得は増大する」という考え。一方後者は「市場は本来、弱肉強食の論理を内包しており、一国的にも、国際的にも貧富の格差を拡大するから、その利点を生かしつつ制御しなければならない」という考え方。この二つの考え方の対立がある。これらの中で、今日の報告で言いたいのは北欧を北欧だけで取り上げるだけでなく、北欧という福祉国家が生まれた外的環境としてのヨーロッパがどうだったか、ということを今日は説明したい。その事を前提にして、北欧で福祉が花開いた条件、経済状況が明らかになってくるのでは?と思い、今日は前段のヨーロッパに重点を置いて話をしていく。

B経済を考える現代的意義

20世紀における資本主義と21世紀における資本主義は違う。20世紀は絶えず、社会主義との関係が問題になってきた、社会主義化資本主義かが言われてきた。ベルリンの壁の崩壊、ソ連崩壊を経て21世紀となったときにグローバルな課題としては、どういう資本主義がいいのか、どんなあり方の資本主義がいいのか、が論点へ。経済としての資本主義のあり方を考える必要。資本主義の中でまず、考えるのが貧困。絶対的な貧困ではなく圧倒的な貧富の格差。この問題をどうするか。また高齢化と環境問題。それらの親和的な資本主義でありながら、それが持続可能(サステナブル)な経済を考えていく必要がある。で、こういう課題とのかかわりで既存の先進国、特に北欧諸国はどういう意義を持っているかを考えるかが重要だろうと思っている。

以上を念頭に置きながら、アメリカ一国主義とEU統合の中でのスウェーデンの位置を確認し、その経済的構造と動態を見ることにしたい。さらにアジアはそれらをどう学び、続いていくか。を課題としたい。

よって、二回に分けて発表を行いたい。

1.スウェーデン経済を取り巻く国際環境…米欧対立の中でのEU統合

ヨーロッパの中でスウェーデンは特に突飛した国ではない。ヨーロッパ的土壌があるから、スウェーデンが福祉国家として発展していったといえる。そういうなかで最近進んだEU統合から学ぶことが多いと思う。

(1)   深まる欧米対立

@     日本人は「欧米人」という。ヨーロッパ人=アメリカ人的なイメージ。人種的に共通性があるからであろうが、実は「欧米」という風にはくくれない。「欧州」と「アメリカ」は違うといえるだろう。現実には政治的には欧州とアメリカは対立している。特にイラク戦争においてが印象的。アメリカは強大な軍事力を背景に世界的な支配の仕組みを作ろうとしている。一方欧州はそれに政治的に対抗しようとしている。コソボ紛争のとき、欧州はアメリカに言いなりになるしかなかった。なぜなら、軍隊を色々動かそうとしてもNATO軍を中心にアメリカ軍が握っていて、どうすることもできなかった。それが政治的に問題であろう。そしてある程度の自立した政治力を持とうということが、欧州の課題となった。そして、イラク戦争でフランスやドイツはアメリカにNOと言った。

A     同時に経済分野をめぐっても対立している。一番重要なのが地球環境問題をめぐる対立。「成長を大事にする」か「安定を大事にする」の考え方で大きく対立。こういった対立がアメリカとヨーロッパで非常に表明化している。ジョン・レッドウッド栄保守党下院議員によると「今後20年間は、政府が社会をよくすることができると考えるヨーロッパ人と、自由企業のほうが健康と国富のためにもっと大きな貢献ができると考える北アメリカ人との間の競争の時代になるであろう」と。彼はアメリカ側を指示しているイギリス人である。「二つの制度は互いに、一層振り絞って競争し、最後まで戦い続けなければならない。多くの闘争が生じるであろう。」と述べている。こういう感覚が特にヨーロッパの中で強い。アメリカの自由企業中心主義、という考え方に防衛しなくてはいけない。その戦略としてのEU統合。

(2)   欧州(EU)統合とは何か。

@     EU加盟国の構成と特徴

20世紀は資本主義か社会主義化であったが、今では経済秩序は二類型である。市場による秩序がアメリカと少し前のイギリスと見ると、ヨーロッパの考え方は必要度の競争にある程度の規制をかける、そのある程度の規制が欧州統合である。27カ国を同一の経済圏にする、つまり通貨の統一、共通通貨としてユーロを使用し始め、うまく動き始めた。EU加盟国27カ国は大体人口は2010年頃には人口で約4億8000万人という新型超地域大国へと成長。一番中心的なのは主要六カ国(ドイツ・フランス・イタリア・ベルギー・オランダ・ルクセンブルク)。イギリスとオーストリアは最初は傍観していたが、ブレア首相が政権をとってからEU支持、大陸支持であるがまだ一歩引いている状態。北欧諸国は、EUの中で平均所得が高いので、EUにはいることにメリットがない。EUを時刻の輸出先として考えたときに、将来的なメリットがあると見て加盟。逆に南欧諸国は所得が低いので、非常にEUに期待をかけている。例えば、ギリシアのアテネオリンピックは自国だけではできないように。不安定なロシアとテロがでてくる可能性のあるアフリカに身を守りながら、ヨーロッパ全体で成長をしていこうという考え方。

A     EU基本戦略 政策綱領 00年4月「リスボン戦力」

これは北欧の影響もあるだろうが、全体としてはデジタル革命とグローバリゼーションに立ち向かう最大の武器は福祉国家を発展させた。そのためには人の能力を高めることつまり、教育訓練投資・教育を非常に重視している。イギリスは80年代のサッチャーが出たときに脱退をする。現在のイギリスはEUの方向にいているが、今のイギリスの一番の問題は読み・書き・そろばんが課題。若い人の多くが本が読めない。工場で生産するためのマニュアルが読めない。という状態。そこでブレアが重要な課題三つ上げなさいといわれたら、教育・教育・教育だと。教育訓練で能力を回復する必要があると。一方ドイツ。ドイツの競争力についてはドイツ国民は自信がある。ドイツには教育訓練の伝統があるから。それを実施をして能力のある人を労働力として送っていけば、それに対応する仕事があるんだと。そのマッチングを通じてヨーロッパの人は国際的な状況で力を持てる。実はこの発想はスウェーデンが最初だった。スウェーデンが他国とちがっていたこと、それは積極的労働政策、いわゆる教育訓練制度。労働者の能力を高めて失業を少なくしましょうという考え。それを世界でいち早く実施。「人に投資し、行動するダイナミックな福祉国家を発展させていくことによってこそ、ヨーロッパは知識経済の中で地位を確立することができる」

B     基本的目標

「ヨーロッパの社会モデルは、高いレベルの社会的保護を提供し、社会的対話を重視しており、会社の結束を維持するために必要な諸活動を支える公共目的の諸サービスを提供している。この社会モデルは今日では、中心になる価値観を共有することで支えられている」つまり公共的な政策を展開し、社会的保護を行う、コミュニケーションを強める、そういうことを通じて経済を運営することがヨーロッパの基本的目標である。その具体的な政策は六つ。@いい質の仕事更に作りだす。A働く側の要求があるが、いったん妊娠などで退職をした後も雇用の職場の出入りをある程度自由にし、安定させる。つまり雇用の弾力性と安定性のバランス。B貧困と差別の排除と社会的包容力の向上C社会的保護の近代化D男女平等の実現。EEUに入らなくても周辺の国の労働条件をよくする。

これは、2000年ごろに急に出てきたわけではない。戦後からの歴史の中で対話を進めて、第二次世界大戦のような悲劇を二度と起こさないために、そのためにフランスとドイツはどうやって仲直りするか。例えばフランスとドイツの国境地域の工業地帯の炭鉱を共同管理することで仲直りした。そういった中で広まってきたのがEU統合。逆に言うとそういう器が公益な経済圏としてあるということが福祉の問題を考える上でも重要であろう。

(3)   福祉を重視する欧州戦略

@     生命の出発点としての平和の維持と食糧確保

第二次世界大戦の当事者であるフランスとドイツの歴史的和解。それがヨーロッパの平和の一つの条件。更に、1989年以降ドイツの東西統一による冷戦の終了。これで一応ヨーロッパでは共通理念を確保する環境が整った。また、農業政策。輸出に頼っている日本はアメリカと喧嘩できないが、EU共通農業政策によるGDP1.3%を補助金として農業に回し、農産物を大増産して、食料的にも一応安定している。

A     健康と老後

加盟国平均寿命は74.3歳で非常に高い。医療体制はイギリスはぼろぼろらしいが、それ以外は比較的充実している。老人福祉では「突出して」デンマークがすごいという話をよく聞くが、それが目指すべき一つの方向性である。

ではなぜそれが可能なのか。一つは、税金が高く、付加価値税を15〜25%の範囲で徴収。税制が大きいので政治も大きくなっている。日本やアメリカはそうではない。消費税の問題でも日本の場合は、とられて何に使われるか分からない、表明性がないから。ところが欧州ではそれについては全く問題がない。あるドイツで公務員と結婚し、通訳をしている日本国籍のままの女性。彼女は日本の国民年金に加入していない。それは「国家が確実に保障してくれるから。外国人である私に対してもそう思えるだけのシステムが出来ている。その代わり、貯金は一切ないし、不安はない」と。そして日本と違い、そういう問題が政治的争点になっている。年金の在り方をどうするかによって、確実に政権が変わる。欧州で税金が高いことが問題にならないのは、政府が税金を集め、弱者に有利なように各種支出を行うことへのコンセンサスが基本的に成立している。一方、個人に対する最高税率も高い。金持ちからたくさんとりましょうという考えで、それはしょうがないでしょうという感覚。日本の厚生労働省のHPでは日本の個人に対する最高税率が低いことはいいでしょうという考え。ヨーロッパはこんなに高くて大変だけど、日本の場合はこんなに低いからいいでしょうと。それは考え方によってはおかしくて、所得移転を基本的に認めてないということ。所得税・源泉徴収・累進課税の意味はたくさん稼いだ人からある程度税金を徴収して、社会的弱者に分配しましょうという考えだが、日本ではそれが取り潰されている傾向にある。社会保障の移転についても同様。ヨーロッパの場合は、政府が福祉支出を行い所得格差を削減し、老後については現役時代の収入とか変わりなく、政府がある程度の生活水準を保証するという「社会的な」資本主義がコンセンサスである。近年、スウェーデンの年金制度がモデルに日本の年金制度も改革されようとしているが、スウェーデンの政策も基本的にこの考え方。所得比例で一般化するが、低い所得の人にはきちんと年金出しましょうという形を作るためにはある程度の所得配分をどうするかを考えているから。一方、日本の場合はそれができないと厚労省は言う。スウェーデン的にやると積立金不足や赤字の問題をどうするか、スウェーデン的にすると破綻がくるでしょうと。

B     環境保護政策

CO2削減に対しての対策をアメリカは嫌だといっている。実際にその排出量はEU平均で年8.5t。日本は8.9t、アメリカは20.1t。アメリカが突出して二酸化炭素を出しているのは、、経済第一主義だから。二酸化炭素を削減していると企業の競争力が落ち、雇用がなくなり、アメリカ経済は不景気になり世界的にもマイナスになるから二酸化炭素削減よりも経済を第一にしようという考え。

また、資源税、省エネ促進税制、ガソリン税などのようなグリーン・タックス率はEU23%、日本は1.7%、アメリカは0.9%。グリーンタックスの企業負担がアメリカは少ない。

C     公共事業に対する考え方の相違

街の作り方、森の整備など、景観・自然を大事にしながら、そこに市民が入っていくように環境整備していく。これは経済発展や災害防止のためのインフラ作りという次元を超えている。日本の住宅は4〜50年単位だが、ヨーロッパは100年〜120年。建てるときはコスト上高いが、それを長期的に使う。外壁を保存しながら内装を変えていく、という形で公共投資を行う理念が違う。

経済規模に対する中政府の収入の比率はEU平均で45.5%。日本やアメリカに比べて比較的大きい。この大きい政府の一般的イメージは大きい政府になると赤字が増えて大変だから、小さい政府にしなさいというのが日本やアメリカの考え。ヨーロッパの場合はこの大きい政府を支える企業の国際競争力がある。EU平均の一人当たりの国内総生産を100とするとアメリカは150でダントツ高いが、日本が110くらいでほとんど日本とEUは同等。政府が公的な部門をある程度大きくして、、企業は国際競争力を持って、両者がバランスを取りながら一つの経済システムを作っている。

EU内でも所得再配分をする。それが「構造基金」という考え方。それは「結束基金」「欧州社会基金」「欧州地域開発基金」「欧州農業指導保障基金」「漁業指導制度」から更生され、全体として、EU域内の公共工事や施設建設、教育訓練などに使われ、域内での地域格差や所得格差解消に利用される。原則は申請主義で、きちんと審査をする。例えば、ギリシアでのオリンピック。EUが「結束基金」を使って支援してギリシアが大きくなればそれがEU全体の成長につなり、そこが新しい市場となるので、支援した他国も富むという考え。

D     社会憲章から社会行動計画へ。

1985年「欧州社会領域」確立の構想。それは、働くものを保護しましょうということ。そのための共通のルール作りを欧州は行い、調和された発展を生きないで目指そうというもの。これは1957年のローマ条約から始まっている。これのために、労働者は守られているが企業は大変。「市場に自由な広がりを与える一方で、国家、公共機関、地方自治体、社会的パートナーの活動を認める社会モデルを擁護するもの」社会的パートナーとは労働組合などのような社会運動のことで、それらを認め、擁護することが社会憲章・社会行動計画である。

 

(4)   「社会的な」ヨーロッパ作りとは何であるか。

@     ヨーロッパ・コンセンサス(丹下先生が作った言葉)

     市場原理をあらゆる分野に適用することは社会不安の増大につながり、治安維持の社会的コストを増大させる。市場原理による政策運営は、投資者に直接の利益をもたらさない社会的諸基盤の整備をしない。この典型がサッチャー以降のイギリス。これによって鉄道事故や列車のドアが開かないような公共交通手段や先ほど述べたイギリスの普通教育の荒廃。

     市場は非市場制度を利用する。特に家族・教育機関・地域共同体・キリスト教会などの宗教団体などは市場によっては育てない。社会を律するとともに、個人の精神生活を律する倫理や価値観は日市場的なものが生まれるのであり、この部分の擁護・育成が大事。キリスト教社会的であろう。日本においては、そういう価値観・倫理を形成するものがない。それ故に、企業社会がそれに取って代わり、企業の行動が個人の行動批判につながる。例えば鳥インフルエンザの問題。

     企業利潤の極大化だけを目標にしなくても、競争力があり、比較的平等で、所得水準が高く、安定した資本主義を作ることは可能である。平等であることは活力がないから紙上が衰えると考えられがちだが、ヨーロッパでは平等であっても活力があるということは可能であると考えている。

     株主の利益だけを優先する企業は長期的によくない。市場原理を暴走させる社会は絶えず不安がある。それは魅力ある社会にならない。魅力ある社会にするためには政府が何らかの安心感を与えることが大事だ。知恵のある強力な政府が社会の安定の発展のために指導力を発揮しなければならないし、そういう民衆のエリート的な指導者を作るためにどうするのかが大事。

     国際資本移動と直接投資が急増し、情報技術の発展によって各国経済の緊密性が強化される時代にこそ、日市場部門を大切にし、福祉を重視するヨーロッパ型資本主義を堅じする必要がある。多様な中に存在する共通性、その中でトレンドとしての福祉重視の傾向がある。それを育てることが重要だ。

     EU拡大は、そういう形が世界の資本主義の一つものモデルになるであろう。

以上のような考え方があるらしい。

A     ヨーロッパ・コンセンサスの北欧にとっての意味

ヨーロッパ全体の政治的・歴史的・経済的・文化的状況そのものが、北欧における福祉国家の形成と機能の国際的条件となっているという側面をみる必要性。スウェーデンは戦火にまみれていないという好条件はあったが、EU全体が戦後復興する中で基本的にリードしたのだろう。なぜイギリスではなくて、北欧において福祉国家が成立したのか。それは第二次世界大戦後のスウェーデンのヨーロッパでの位置であろうし、小さいがゆえにモデルを作りやすく、モデルが突破口となり、EU全体で社会的ヨーロッパを造ることになったのであろう。

これらをふまえて次回、スウェーデン経済はどうであったかを見ていく。特異性というよりも他のヨーロッパに影響を与える普遍性とは何なのかを見ていきたい。

 

この報告は限られた専門家ではなく、初めて勉強した自分が読んだ書物をまとめた私個人の意見であるので、正しいかどうかは皆さんで判断してください。

 

質疑応答

     日本で盛り総論としてみたら高福祉の水準、税制をきちんと改定した上での社会保障の整備が日本では行えないのが、国と企業との関係があるのでは?あるいは労働者の保護とか働く条件をどう造っていくかを考えると日本とは確実に違う。その違いはどういう風に見ていられるか?

北欧を見るのは逃げではないかと思っていた。日本の現実はあまりにも厳しく、暗い。絶望的でどう展望を見出したらいいかができない。それは歴史的規制があって、その歴史を変えるには時間がかかる。日常的に日本で起こる事体にすごく違和感を感じる。例えば拉致された日本人がでた時にマスコミに家族が出てきて、「とにかく助けてほしい。」と。しかしその裏には多くの死者が出ている。その後、家族に対しての圧力「なぜ行かしたのか」というものがあったのだろう。日本人の心底を見たときにそこが問題にならないのはなぜなのだろうか。わずかなところでも現実からしかない。現実を見たら厳しいとしか言いようがない。すぐにできないからといって、否定的に見るのはよくないというのが最近の感想。なぜ、そう思ったかというと、ルールある資本主義はある。そのモデルを見た。日本では現実的に行えてないが、EUはその努力をしてきたのだろう。それを我々はしなければいけない、というレベルでしか展望はいえない。今回の報告は自己納得として、こういう考え方はあるんだと言うことができ勉強になった。

レーニンが死ぬときに「量は少なくても、質のよいものを作ってくれ」という遺言。スターリンはその逆を行った。質は悪くて量だけ多い。しかしスウェーデンは量は少ないけどすごく質がよいものを実践した。つまりそれは、あとは量をどう増やすかを考えたのでいい。質がいいものを探すにはすごくエネルギーが要るが、いったん質がいいものを発見したから後は量のことを考えたらいいかそれは楽。北欧の福祉の位置は量が少なくても質のよいものだった。それが存在したがゆえに、ヨーロッパ全体が社会的ヨーロッパというスローガンを掲げるためのモデルとなりえた。それを日本の現実でみると、アジアの中でどう質のよいものを発見するかをみなければいけないのではないか。日本が福祉国家として成長するためには経済成長が必要。そのためには、アメリカべったりではだめだろう。むしろ中国などとの経済交流をして、ある程度の成長を築けるように、安定する状況を作らなければ、福祉国家を作る基礎ができないだろう。アジアの福祉国家としてのモデルを日本が作らなければいけない。そういう中でEUのような社会的アジアを構想できればいいのでは?ただ、政治的問題で誤らなければ無理だろう。独・仏が和解する構図を学べない日本の政治力の低さ。だから10年間日本の不況や高齢化問題を打破できないのも、日本の政治力の問題があるのでは。

     最後に面白い意見交換を手短に…。

質問者:日本では、こういうヨーロッパ的な考え方を持っていっても、無理。今の法律内でできることでないと無理。

丹下先生:例えば県立北宇和病院と南えひめ病院の話。同じ地域に存在する病院だが、南愛媛病院は労働条件がよくなっているが、北宇和病院はどうしようもない状態。行政の説明会が年末にあったが、説明会の日程を地域に告知したのがその二日前。しかし年末の忙しい時期の昼間に集めても人が集まるのか?でも行政は説明したという。結局、同じ地域にある二つの病院の方向性が全く違っている背景にあるのは運動、社会的圧力。南愛媛病院は少なくとも社会的圧力をかけたが、県立北宇和病院はかけ切れてないのでは?集団で組織して社会的圧力をかけることが必要では。今の日本では圧力をかける市民運動の絶対的弱さが挙げられる。どうすればいいかは組織論。

質問者:今、福祉を買うという考えを持つ人が日本には多い。今までは国が用意するものという考えだったから、それで運動を行えた。しかし買うものになると、買える人が買えば言いという考えになる。自助努力が出来ない人にだけ、国が与える。その方が受け入れやすいのかな、と活動していて思う。でもそれではよくないのでは?ヨーロッパをみるとそうではない。すべての人が同じ条件。それがいいなと思うけど、それを主張するためには理論的なものが必要なのでは?その背景には福祉にお金をかけると経済が衰退するという考え。

丹下先生:理論的なものを用意してもだめ。モデルはモデル。モデル以上の何物でもない。例えば、ヨーロッパの現実を理論化して行政との交渉において理論的に説明しても勝てるとは限らない。なぜなら、支配的イデオロギーがあるから。そこにヨーロッパが発展していることを持っていったとしても、僕たち自身がそれで変わるかとは、僕たち自身もそれを思ってない。日本の現実をみたときに、支配的イデオロギーの中で出てくる矛盾を見つけたり、要求は何かを細かく誇示するしかないのでは?

アメリカはめちゃめちゃお金持ちの人と貧しい人の税率がそんなに変わらない。だから、お金持ちにはすごく個人にお金が入る。そうしたら、そのお金を分けるようになるかと考えたら、なるわけがない。いくら理論を持ってきてもそれにはならない。だから取るしかない?理論に期待するより、現実を変えなければならない。

 

理論よりも運動、それとも、運動に必要なのは理論。という二つ考えの下でのいろいろおもしろい意見が飛び交いましたが、時間のため終了となりました。かなり端的な説明ですので、一部分だけの報告ですが…。

文責 坂本 有希

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